小さな植林隊





雑記 平成23年3月19日(土)






京都大学原子炉実験所助教・小出裕章さんのインタビュー


http://www.the-journal.jp/contents/jimbo/mb/post_100.html


福島原発事故
京都大学原子炉実験所助教・小出裕章氏電話インタビュー

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 17日午前、福島第一原発2、3、4号機で白煙が確認された。自衛隊が空から放
水するなど、冷却作業が続いている。
 福島原発事故の現状と今後想定される問題点について、京都大学原子炉実験所
助教の小出裕章氏に、ジャーナリストの青木理が聞いた。

青木: 東京電力福島第一原子力発電所の状況が深刻化しています。緊急性が高
いニュースなので、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんにお 話を伺おう
と思います。小出さん、よろしくお願いします。
 まず、今最も懸念されているのは、「メルトダウン」がさらに進むことだと思
います。今、一部炉心溶融が起きている。ただし、一般に言われて いる「メル
トダウン」にはまだ達していないという認識でよろしいでしょうか。

小出: 私もそう思います。

青木: 「メルトダウン」が起きれば、どういう状況になるのでしょうか。

小出: 皆さん、原爆はご存知だと思います。広島に落とされた原爆で燃えたウ
ランの量は800グラムでした。現在、私たちが使用している原子 力発電所は日本
に54基あり、平均して1基につき100万キロワットを発電します。100万キロワッ
トの原発が1日稼動すると、ウランを3キ ロ燃やします。つまり、広島型原爆3〜
4発分のウランを燃やすわけです。それによって作られたエネルギーの3分の1だ
けを電気にして、3分の 2は海に捨てるというのが原子力発電所という機械です。
青木: 海に捨てるというのは、発熱したものを熱量として捨てるということで
すか。


小出: そうです。1秒間に70トンの海水の温度を7度上げて、また海に戻すとい
う、なんとも言葉に尽くせないほどの膨大な環境汚染をしなが ら発電する装置
です。

青木: 今は、原子炉の燃料棒が冷やせない状態になり、その一部に溶融が起き
ているというわけですね。確か、スリーマイル島原発事故のときは 燃料の45%
くらいが溶けて下に落ちたと記憶しています。しかし、幸いにも底は抜けません
でした。福島原発では底が抜ける可能性があるので しょうか。

小出: スリーマイル島の事故のときは、電気が使えました。ポンプも使えまし
た。それでも事故になり、原子炉の半分近くが溶けてしまいまし た。しかし、
最終的にはポンプを回すことで原子炉を冷やし、最悪の事態を免れたわけです。
 福島原発の場合は一切の電源がなく、ポンプも回らない状況です。消防のポン
プ車を使って冷却水を回す方法を思いつき、一気に破局的な状況に いくのを食
い止めているのが現状です。しかし、事態は日が経つにつれて悪化しています。

青木: 政府や東京電力は「まだ大丈夫」と言っています。それが嘘だとは言い
ませんが、事態はどんどん悪化しており、今後は最悪のことも考え なければな
らないと思います。いわゆる「メルトダウン」が起きると、格納容器に穴が開く
のでしょうか。それとも爆発するのでしょうか。

小出: 色々な可能性が考えられます。原子炉の燃料が存在している場所を炉心
と呼びます。炉心を包んでいるのは、鋼鉄の巨大な圧力容器です。 燃料が溶け
るか「メルトダウン」してしまうと、圧力容器の底に落ちます。その部分に水が
残っていると、水蒸気爆発という現象が起きます。爆発 の規模にもよります
が、もし大きいと圧力容器が壊れてしまうこともあります。
 原子炉圧力容器の外側には格納容器があります。原子炉圧力容器が水蒸気爆発
で破壊される事態になれば、格納容器もたぶん壊れてしまいます。 そうなる
と、放射能を閉じ込めるすべての容器が壊れてしまうことになってしまいます。

青木: 燃料が溶けることで床が抜ける可能性もあり、水がたまっている場合は
水蒸気と反応して爆発を起こし、最悪の場合は格納容器も壊れてし まうという
ことですね。

小出: 青木さんがおっしゃったように、水蒸気爆発をしなくても、「メルトダ
ウン」した炉心が圧力容器の底を抜く可能性はあります。炉心は 2800度になら
ないと溶けません。しかし、圧力容器は鋼鉄なので、1500度にもなれば溶けてし
まいます。2800度の溶融体が溶けて下に 落ちれば、もちろん圧力容器も溶けて
しまいます。その外側の格納容器に水が残っていると、また水蒸気爆発をする可
能性があるわけです。

青木: 経産省原子力安全・保安院は、今回の事故を国際原子力機関(IAEA)が
定める8段階の国際原子力事象評価尺度で、「レベル4」とし ています。
しかし、フランスなどは上から2番目の「レベル6」だと言っています。スリーマ
イル島の事故は「レベル5」、チェルノブイリ事故は一番上の 「レベル7」です
が、この原子力安全・保安院の「レベル4」という考えは論外なのでしょうか。

小出: 論外です。スリーマイル島の事故は越えています。

青木: 複数の原子炉が同時多発的に制御できなくなっている現状を見ると、
チェルノブイリ事故以上の事象と言えるのでしょうか。

小出: 最終的な結末はわかりませんが、いま炉心が溶ける危機に直面している
原発が1、2、3号機と3つあります。その出力を全部合計する と、200万キロワッ
トを超えます。チェルノブイリの原発はちょうど100万キロワットの出力でし
た。今回はその2倍に相当する放射能と戦っ ているわけです。それが出てきてし
まえば、チェルノブイリを超えてしまうわけです。

青木: ここから先は、ご覧になっている方にも冷静に考えていただきたいし、
私もパニックを誘発したくはないですが、最悪のケースを想定する 必要はある
と思います。仮に原子炉が完全に「メルトダウン」した場合、首都圏への影響は
どの程度あるのでしょうか。

小出: 風向きなどによると思います。西風がずっと吹いていれば、出てきた放
射能は太平洋の方にいくので東京は助かります。しかし、現に今東 京で放射能
が検出されるように、風向きはころころ変わるわけです。すべての放射能が海に
流れるわけではありません。東京にも当然届くかと思い ます。ただし、どのく
らい届くかはわかりません。

青木: 放射線は放射能物質とは違いますよね。放射線は原発から離れれば離れ
るほど、弱くなると考えて良いのでしょうか。

小出: 放射線を放出する物質が、原発の中にある限りはそうです。

青木: それが、放射線物質として拡散してしまうとどうなるのでしょうか。

小出: 拡散して表に出てしまえば、拡散したもの自体が放射線を出すので、ど
こにいてもだめです。

青木: 風向きが東京に向いていれば、東京の辺りでも相当な汚染が広がる恐れ
があるということでしょうか。

小出: たとえば、福島原発から東京までは200から250キロの距離があります。
チェルノブイリ事故のときどうだったかというと、ソ連当局 は30キロ圏内の住
民を避難させて、無人地帯を作りました。しかし、チェルノブイリの原発から
200〜300キロ離れた彼方で、ものすごい汚 染を発見しました。なぜかという
と、放射能を含んだ雲が流れていき、その地域に雨が降ったからです。
みなさんご存じだと思いますが、井伏鱒二さんという小説家が「黒い雨」という
小説を書きました。広島の原爆が落ちた時にきのこ雲で死の灰が舞 い上がりま
したが、その時に雨が降りました。普通の雨と違って黒く、町の白い土壁に黒い
雨の筋が残るほどだったのですが、その雨に放射能が洗 い落とされて混じって
いたのですね。その雨に打たれた被爆者たちが、さらに被爆したことをテーマに
した小説です。放射能の雲が流れてきたとき に、どこで雨が降るかが決定的な
問題になるわけです。

青木: その地域では、人体に直接影響のある汚染があったのでしょうか。

小出: 私はあったとは思いますが、放射線障害を診断するのは難しいのです。
亡くなったり、髪の毛が抜ければわかりますが、なかなかわからな いまま過ご
していたのだろうと思います。体の調子が悪いと思いながら普通に生活してい
て、3ヶ月後にわかったといいます。

青木: 現在原発の周辺20キロが退避地域になっていますが、なんとか現状で被
害を抑えられた場合、この地域はどうなるのでしょうか。

小出: 正確には答えにくいですが、東京にも放射能が拡散されていることが観
測されているので、原発周辺は東京以上に汚れていることでしょ う。その汚れ
がどの程度かという問題で、人々が住めるかどうかの判断をする必要がありま
す。粗い推測ですが、現時点での汚染であれば、住民は 戻ることができると思
います。しかし、今後さらに汚染が進むと、チェルノブイリのように封鎖しなけ
ればならなくなると思います。

青木: 現時点では、よく調べ除染すべきをすれば、住民が戻って生活をできる
可能性があるということですね。ただし、これ以上悪化すれば、極 端にいえば
人が近づけないような状況にもなりかねないということですね。

小出: おっしゃる通りです。

出演者プロフィール

小出 裕章(こいで ・ひろあき)
京都大学原子炉実験所助教。1949年東京都生まれ。72年東北大学工学部原子核工
学卒業。74年東北大学学研究科原子核工学科修了。74年 から現職。伊方原発訴
訟住民側証人。著書に『放射能汚染の現実を超えて』、『隠される原子力 核の
真実』、共著に『原子力と共存できるか』な ど。

青木 理(あおき・おさむ)
ジャーナリスト。1966年長野県生まれ。90年慶應義塾大学文学部卒業。同年共同
通信社入社。大阪社会部、成田支局、東京社会部、外信部、 ソウル特派員など
を経て06年退社。著書に『日本の公安警察』、『国策捜査』、『絞首刑』など。






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