小さな植林隊

木の知識 2008年6月8日(日)


広葉樹の植林、針葉樹の植林


先日、檜原村の植林に行って来ました。
その時、林業家の方にお話を伺ったのですが、今まで他の所で聞いていた話とは
また違った内容で、そういう考え方もあるのかと思いました。

それは、広葉樹と針葉樹についての考え方です。

植林のイベントに参加すると大概植えるのは広葉樹です。

それは戦後、木材需要が拡大するとの見込みで、建材に適している杉や檜を大量に植えましたが、
予想とは反して、海外の安い木材が大量に輸入され、国内の杉や檜は放置される結果となり、
現代の都市公害の花粉症という弊害がもたらされ、その反動、
もしくは花粉症という問題を解決するためか、あるいは、宮脇先生の潜在自然植生を重視して、
大概、広葉樹の植林がなされています。

それに広葉樹は落葉し、それが腐って腐葉土なり土に栄養がもたらされ、また、根も横に広がり、
土砂の流出を抑えてくれると言われています。

私も、それだけいい効果があるなら、それに今まで針葉樹の単一の森を作ってきたのだから、
広葉樹がいいと思っていました。

ところが、その林業家の方の話では、違いました。

例えば土砂の流出については、それが起こるところというのは大概急峻な場所で、
しかも最近の集中豪雨では、仮に、広葉樹であっても、同じように土砂崩れはおきるとの事でした。
今はほとんどが針葉樹が植えてあり、土砂崩れがおきやすい地形にも針葉樹であるため、
いかにも針葉樹の根の張る力に問題があるように考えられていますが、
最近のような集中豪雨では、仮に広葉樹が植えてあっても土砂崩れは起きるとのことでした。

また、地球温暖化の防止という点から考えると、広葉樹よりも針葉樹のほうが成長が速いため、
二酸化炭素の吸収も針葉樹のほうが優れているということです。
確かに成長は針葉樹のほうが速いです。
また、単位面積で考えた場合も、広葉樹は根と枝を横に大きく広げるため、
針葉樹に比べると育つ本数は少ないので、まっすぐ縦に伸びる針葉樹のほうが
二酸化炭素の吸収量は多いとの事でした。

こういう部分を考えると、針葉樹は花粉症の原因で悪者としての印象がありますが、
そうでもないのかと、想いを改めました。

特に、地球温暖化対策としての部分で、木の製品が増えることは大切です。
つまり、

「木を切る、家や家具などの木の製品を作る(炭素の貯蔵庫として存在する)、
木を植える、育つ段階で二酸化炭素をたくさん吸収する、成長したら切る、」


この繰り返しで、木は空気中の二酸化炭素を減らして、酸素と炭素に分解、
木材の中に炭素を固定化し、また植えた木が、育つ段階で
二酸化炭素をたくさん吸収という循環ができるので、木が育つ速度が速ければ、
この循環も早くなるということで、より二酸化炭素を減らせるということになります。

それぞれの木には適した環境(例えば湿ったところや気温が低いところが好条件など)が
あるので、それを考えると、その土地に本来あるべき植物(潜在自然植生)が
一番いいあり方だと思うのですが、
今の温暖化という地球全体として大きな問題を抱えている状況では
まずは二酸化炭素を減らすことが先なのではないかと思いました。

しかし、動物の生態系のことなどを考えると実がなる広葉樹のほうがいいのでは
という思いもあります。

全部を考えると身動き取れなくなってしまいますが、単一の森を作るのではなく
双方の特徴をうまく生かせた森作りをしていくのが一番いいのでしょう。


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