小さな植林隊


活動報告 2018年(平成30年) 8月27日(水)


インドネシア ボルネオ島 植林 アブラヤシプランテーション視察 プラスチックごみの状況 その4





アブラヤシプランテーションに着きました。
樹齢約10年程度のアブラヤシ。


アブラヤシの実の搾油所。

実は収穫後、24〜48時間以内に絞らないといけないため、

プランテーションの近くに4000〜5000ヘクタール規模の工場を作ります。


プランテーション前に設置してあった看板。

「森に火をつける事を禁止、破ったら10年の禁固刑、100億ルピアの罰金」と書かれています。


プランテーションの内部。

幹が太く、枝の広がりも大きいです。

プランテーションでは、除草剤を撒いているため、川が汚染され、一時期全ての魚が死滅したそうです。

皮膚病の原因になっているおそれもあるとの事。


枝の分かれ目の部分に、実がなっています。実は一塊20kg程度になります。

この高さになると作業がきつく、落下した実が下手に頭に当たったりすると怪我をするので、

大変な重労働になります。しかしそういった説明は、事前に業者からはなく、何も知らない労働者は

仕事を続ける中で徐々にその大変さに気づいていく事になります。


このアブラヤシは根元が少し傾いています。

排水路で土壌の水分を抜いたことの影響が大きいと思われます。

アブラヤシは1日8リットルの大量の水を吸い上げます。


こちらはこの辺りの航空写真。

白い部分は、ミネラル層(珪酸質の土)。

排水路を作ると土壌の乾燥が進み、農業に不適な土地となります。


これが泥炭です。軽く、ぽろぽろしている感じです。

植物遺骸が完全に分解していないため、乾燥した状態では火災で火がつき、燃えてしまいます。


足で踏むとふかふかしていました。

おそらく3mくらい、深いところでは10mくらいの厚さが堆積しているそうです。

火災で地中まで火が延焼すると手がつけられなくなります。


金の採掘が行われる前と、行われた後の川の状態の違い。

左の写真の川は本来の泥炭湿地の川の色で黒っぽい感じです。これはタンニンと鉄が結びついて

黒くなっているからです。右の写真は、川が茶色くなっていますが、これは金の採掘によって、土が

川に流れ出した結果、この様に変色しています。


左はボルネオ島の金鉱山の露天掘り採掘跡地の航空写真。露天掘りでは、森林が大規模に破壊されます。

右は露天掘りの参考画像(ウィキペディアより)。露天掘りは金だけでなく、ダイヤモンドや他の宝石類、

鉄、銅、アルミ、石灰、石炭、レアメタル、レアアース等、様々な地下資源を採掘する際に行われています。




環境のお話 11 :「物」を通して、森は2度破壊される。


全ての物は「資源」からできています。

その「資源」は「自然」の中に存在します。

「資源」を掘り出すために、「自然」を破壊をします。

「資源」をエネルギーを使って「物」に変えます。

「物」が使われなくなり、捨てられると、それを処分する為に、埋立地に埋められます。

埋立地は「自然」を切り開いて作られます。

この様に考えると、「物」を通して、「自然」は2度破壊されると言えます。



参考画像 金採掘場 パプアニューギニア




大量生産、大量消費、大量廃棄。

そうやって成り立つ経済とは、本当にあるべき姿なのでしょうか?

今の私達の、「物」に溢れた生活環境の裏側で、

資源を収奪される側は、常に自然破壊に直面しています。


資源の中でも、レアメタル(希少金属)、レアアース(希土類元素)と呼ばれる物質は、

その名の通り、希少であるため、その資源を確保するには、より広大な面積の自然破壊が伴います。


以前、A seed japan という団体が、「ケータイゴリラ」、という標語を用いて、

遠くの森に住むマウンテンゴリラの住処を守る為、

日本の携帯のリサイクル促進運動をしていたのを見ました。

分かりやすい表現で今も印象に残っています。

携帯電話にはタンタルというレアメタルが使われており、携帯電話を買い換えるほどに、

タンタルの需要は高まり、遠くの森の破壊につながります。


使用済みの携帯電話をリサイクルに出せば、その中の材料は再利用されますが、

物置にしまったままだと、リサイクルされない、つまり、新規のレアメタルが必要となり、

結果的に遠くの森の破壊を守る事ができません。


なので使い終わった携帯は積極的にリサイクルに出す事をお勧めします。

また、できるだけ長く使い、需要圧力を高めない事が大事です。


言うまでもなく、携帯以外にも様々な物についても同様です。


レアメタルについて、かつて資源獲得競争などというニュースを見た事がありますが、

国を挙げて、我先にと急ぎ、資源収奪に向かう姿勢はいかがなものでしょうか。

先進国は、資源を収奪される側の国の自然やその周辺に住む人の事を考えるべきではないでしょうか。


これまでの日本では物の豊かさを追求してきました。それは今も続いています。

しかし、いくら物が豊かになっても、心は豊かにはならいというのはすでに明らかで、

過去、長らく続いてきた年間3万人を超える日本の自殺者数や、

断捨離という、物を減らす事が流行っている経緯がそれを証明しています。

物は心を豊かにはしません。



もちろん必要な物もあります。必要な物までも買うな、と言うお話ではありません。

人はついつい無用な物まで買ってしまう傾向があるので、それは見直そう、という趣旨です。


部屋を片付けるとすっきりする感覚。誰もが経験していると思います。

机の上が片付くだけで、また勉強しようという気になります。

旅行に行ったとき、すっきり片付いた宿に泊まると、心が落ち着きますよね。


物は必要最低限あれば十分です。

ある物を使って工夫する。

「ない物ねだりから、ある物探しへ」

「足るを知る」


これが大事です。


南米、ウルグアイの第40代元大統領、ホセ・ムヒカ氏は、2012年に開かれた

持続可能な開発会議、通称リオ会議で、「もっとも衝撃的なスピーチ」をした人として知られています。

その演説の中で、エピクロス、セネカ、マライア民族の言葉を引用して次の様に述べています。

「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、

無限の欲があり、いくら物があっても満足しない人の事だ。」



ホセ・ムヒカ氏は大統領らしからぬ質素な暮らしぶりも注目され、

世界で最も貧しい大統領、と呼ばれる様になりました。

しかし、本人は、その表現についてこの様に述べています。

「みんな誤解しているね。私が思う貧しい人とは、限りない欲を持ち、

いくらあっても満足しない人のことだ。
でも私は少しの物で満足して生きている。

質素なだけで貧しくはない。


ホセ・ムヒカ氏の人生哲学は、質素である事。

リオ会議での衝撃的なスピーチが、世界の環境破壊と政治について述べられていた事と関連しています。

関心のある方は以下の本に、スピーチ内容や、名言が書かれていますのでご覧下さい。

「ホセ・ムヒカ 日本人へ贈る言葉」
「ホセ・ムヒカの言葉」






環境のお話 12 :水銀と水俣病とごみ焼却場と火力発電所


金の採掘では、金鉱石に含まれている金を取り出すために、水銀が使われます。

細かく粉砕した金鉱石を水銀に浸して、アマルガム合金を作り、それを燃やして水銀だけ蒸発させ、

残ったものが金となります。その際、蒸発した水銀蒸気を吸うことになります。

環境への影響が深刻な為、水俣条約で禁止され、この方法が実施されるのは減る傾向にありますが、

経費が安く抑えられるため、途上国ではまだ用いられています。



今回のホームステイ先の川や周辺土壌も、金の採掘がされている以上、

水銀汚染されている可能性があると言えるでしょう。

村の人たちにとっては日常生活で使う川。水を直接飲む事はなくても、その川にいる魚介類を

食べれば、水銀は人の体内に入ってきます。子供達はマンディ(水浴び)や川遊びをするので

危険がつきまといます。

また、蒸発して大気に拡散した水銀は雨と混じって大地に降り注ぎます。

土壌を汚染し、汚染された土壌からできた作物に混じる可能性もあります。


ここで採掘される金は、村の人たちが使うのではなく、主に先進国といわれている国々へ輸出されます。

先進国で需要が高まるほどに、現地でのこの様な自然と環境破壊につながる仕事を加速させることに

なります。私達日本人は、お金を出せば、なんでも買える状況にありますが、その裏側でどんなことが

起こっているのか、真剣に考える必要があります。



●水俣病

水銀は脳の神経を侵し、死に至らしめます。

代表的な事例が、かつて日本で起こった水俣病。

下の動画で、水俣病の様子がわかります。



水俣病の原因となった水銀の排出源は、チッソの工場排水でした。

チッソの工場から排出されたのは、水溶性の無機水銀でしたが、自然界に放出されると、

バクテリアの影響で、有機水銀の1つのメチル水銀に変わります。

メチル水銀は脂溶性で、体内の脂肪に吸収されやすく蓄積していきます。


自然界では、生物濃縮という、食物連鎖によって、汚染物質が上位捕食者により強く濃縮されていきます。

プランクトンから小魚、小魚からより大きな魚と、汚染物質がたまっていきます。

人間は食物連鎖の頂点にいるので、汚染の濃縮が数十万倍〜数百万倍と非常に高くなります。

メチル水銀の影響は、大人以上に、お腹の胎児や、赤子、子供には、より強い影響が出る事が

わかっています。

脳や神経細胞が破壊され、言語障害や感覚障害、歩行障害など、発達に障害を持ったり、ひどい場合は

意識不明、死亡となりました。


現在の日本で水俣病の様な水銀中毒が発症したという情報は伝わってきませんが、

自然界から水銀がなくなっている訳ではありません。



厚生労働省は、 水銀の胎児への影響を避けるために、

妊婦はマグロなどの魚介類を食べる量を控える様、一応ウェブサイトでは注意喚起しています。

しかしメディアではそんな情報は伝わってこないので知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。

(上の画像をクリックするとダウンロードできます。元のサイト 2005年(平成17年) 厚生労働省

その後、2010年に改訂版が発表されていますが、資料としては2005年の方が
色々詳しく調べられています。一応改定後のサイトはこちら 2010年 厚生労働省 

上記画像の資料には、

前置きで「低レベルで人の健康に危害を及ぼすレベルではない」とし、

中段で「一部の魚介類では食物連鎖による蓄積で人の健康、特に胎児に影響を及ぼす恐れがある

高いレベルの水銀を含有している」
とし、

結論で「現段階では水銀による健康への悪影響が一般に懸念されるようなデータはない。」としています。

なんとも紛らわしい表現です。

危害はない、健康に影響を及ぼす高いレベルがある、悪影響の懸念はない。。。

一体どっちなんだ?と思いますよね。

こういうのを支離滅裂といいます。


要するに、「海の生き物の水銀含有濃度は一般的には低いと思われるが、

中には高いものもいるので注意して食べてください。」という事です。

何とかして安心させ食べさせようという意思が透けて見えると、逆に不信感を持たれます。


その辺を官僚の方は理解されるとよろしいかと思います。


●水俣条約

水銀による汚染の広がりを防ぐ為に、2013年10月に水俣条約が採択され、

2017年に締約国が50ヶ国を超えたので発効となり、

2018年11月末時点で締約国は101ヶ国となっています。


水俣条約の内容を国内で実施する為に、中央環境審議会の答申を踏まえて、

大気汚染防止法が改正され2018年4月に施行されました。


●水銀の排出状況

日本の水銀の大気排出源として、以下の様なものがあります。

出典:水銀大気排出規制への準備が必要です 環境省2016年10月

上の図のうち、桃色で囲まれた項目、つまり

・石炭火力発電所

・産業用石炭燃料ボイラー

・非鉄金属製造施設(鉛、亜鉛、銅及び工業金)

・廃棄物焼却設備

・セメントクリンカー製造設備

が水俣条約の大気排出規制の対象となっています。


●日本の水銀排出施設

日本の水銀排出施設数は全部で4458施設(2018年4月1日時点)で以下の通りです。
出典:平成30年12月12日 環境省 中央環境審議会  大気排出基準等専門委員会(第8回)
(画像をクリックしてもダウンロードできます。)

上記の表で、一般廃棄物焼却施設は、2636施設、産業廃棄物焼却施設は1105施設で、

合計3741もの廃棄物焼却施設が日本国内に存在しています。

日本の水銀排出施設が4458もある事も驚きですが、

ごみの焼却施設が3741もある事にも驚きます。(下水汚泥は除いて)

日本の大量消費型経済のまさに負の部分です。



●日本の水銀排出規制と海外の規制

水俣条約を受けて、各施設の水銀規制は以下の様になりました。
出典:大気汚染防止法の改正について 環境省 2016年11月資料


赤枠内が石炭火力発電所についての規制です。

しかし、この規制については環境NGOから基準が緩いという指摘があり、

アメリカでは0.5μg/Nm3、

EUでは2μg/Nm3(新規)、4μg/Nm3(既存)の基準を設定しているのに

日本は8〜15μg/Nm3と、かなり緩い基準となっています。


環境NGOは以下の様に指摘しています。

「現在日本の石炭火力発電所には、水銀を特定して除去する設備は設けられておらず、

ばい煙処理設備としての脱硝装置が設置されているのみであり、今回の排出基準値は、

脱硝設備、除塵設備、脱硫設備などが、副次的に水銀を除去している実績に基づいて

定められたものです。これでは水銀の排出を削減させるための規制ではなくて、

現状レベルの追認ではないでしょうか。さらに、総排出量の削減について目標値や、

到達のためのスケジュールや、基準に違反した排出源に対する規制なども考えられていません。

水銀対策で事業者に石炭火力にコストをかけさせずに、安い電源として維持しておこう

ということなのでしょうか?」 (出典:気候ネットワーク


●石炭火力の環境汚染と立地

石炭火力発電については、水銀の他にも、地球温暖化の原因となる二酸化炭素や、

酸性雨や光化学スモッグの原因となる二酸化窒素や二酸化硫黄、

肺の奥まで到達するPM2.5など、様々な大気汚染物質を発生させる問題の多い発電です。


日本の石炭火力発電所の新規計画と、既存施設の位置はこちら。(2012年時点に立てられた計画)
新規計画 既存施設

詳細は以下のサイトをご覧ください。

出典:石炭発電所ウォッチ


日本は、時代に逆行するように新規に石炭火力発電を増設しています。

東日本大震災後、2012年から2018年9月末までの間に、50基、約2300万キロワットもの

建設計画が立てられました。このうちすでに稼動したのが8基、建設中が15基です。

一方、地元の反対などで中止されたのは7基。

残りの20基ですが、環境への影響を予測・評価する環境アセスを終えたのが5基、

環境アセスを進めているのが12基、不明が3基となっています。


イギリス、フランス、カナダは2015年のパリ協定を踏まえて、

2030年に石炭火力発電の稼動をゼロにする方針を発表
しました。

しかし、日本は2030年の電源構成における石炭火力発電の比率は26%とし、

さらに原発と合わせて石炭火力をベースロード電源としています。

これは国際社会からみると非常識、環境への無配慮と言えます。


詳しくはこちら。

朝日新聞デジタル 気候ネットワーク「止まらぬ石炭火力発電 事業者はリスクに気づいて」

あわせて、石炭火力発電を推進する経済産業省資源エネルギー庁の見解も載せておきます。

経済産業省資源エネルギー庁「なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?
〜2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み」



反対側と推進側の言い分を比べてみると、よくわかると思います。


●電源別 二酸化炭素排出量の違い

以下は電源別の二酸化炭素排出量の違いです。
出典:電力中央研究所 2016年


グラフの横軸には、発電施設の種類が並んでいますが、

石炭火力とLNG(天然ガス)コンバインドを比較すると、燃焼時(黄色い部分)の二酸化炭素排出量は

0.864と0.376となっており、2倍以上違います。天然ガスが環境に良いといわれる所以です。

しかし、それ以上に、太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、

そもそも燃料を燃焼させないので、桁違いに二酸化炭素排出量が少なくなっています。


資源エネルギー庁が言うように、石炭火力の技術が発達し、二酸化炭素排出量が、昔に比べて

減少しているとは言え、石炭火力と再生可能エネルギーとは比較になりません。だからこそ、

海外では、石炭火力の技術進歩にこだわるのではなく、再生可能エネルギーに軸を移しています。


日本が石炭火力にこだわるのは既存の業界団体への配慮と、その見返りを期待する政治家たちの

悪習としか言い様がありません。

この様な実態を知りながら石炭火力を推進するのは、国民を欺き、世界から信用を失う事につながります。



●CCS、CCUS (二酸化炭素回収、貯留)


温暖化対策の1つとして時々話題になるCCS、CCUSというのがあります。

CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)は二酸化炭素回収・貯留という意味です。

発電所や化学工場などから排出された二酸化炭素を他の気体から分離して集め液化し、

地中深くに圧入して貯留するというものです。温暖化対策の1つとして国が進めています。

CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)は二酸化炭素回収・利用・貯留という

意味で、単に貯留するだけでなく、二酸化炭素を古い油田に注入する事で、これまでの技術では

取り出せなかった残った原油を二酸化炭素の圧力によって取り出す事も含めています。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁


●北海道苫小牧市 CCS実験場

日本では北海道の苫小牧市に、苫小牧CCS実証試験センター(北海道苫小牧市真砂町12)があります。

ここでは、2016年4月から苫小牧沖合約3km、海底からの深さ約1000m〜1200mの貯留層に

二酸化炭素の圧入が行われ、2018年8月中旬に、二酸化炭素累計圧入量が20万トンを超えました。

また、同沖合約4km、同深さ約2400m〜3000mの貯留層への圧入を2018年4月に開始し、

98トンの二酸化炭素が圧入されました。


●北海道 胆振東部地震 (2018年9月)

2018年9月6日3時7分、北海道胆振東部地震(ほっかいどういぶりとうぶじしん)が発生しました。

胆振地方中東部の深さ37kmでM6.7の地震で、苫小牧CCS実証実験センターでも震度5弱の

揺れとなりました。



●CCS実験場と地震の位置

以下は左がCCS実験場、右が胆振東部地震の地図です。
CCS実験場 出典:GOOGLEマップ 胆振東部地震 出典:気象庁


●地震とCCS実験の関係について

地震発生後、2018年11月に、日本CCS調査株式会社から、地震とCCS実験の関係について

まとめた報告書が発表されました。

北海道胆振東部地震のCO2貯留層への影響等に関する検討報告書


報告書では、シミュレーションの結果、地震とCCS実験の関係はないと結論付けています。

ただ、苫小牧CCS実証実験センターは、この日本CCS調査株式会社が経済産業省から事業受託をして

運営しているので、第3者という立場ではなく、事業主体者です。なので客観的な判断がされているとは

考えにくいです。


過去、原発において、散々事故が起こらないと言いつつ、福島第一原発事故ではメルトダウンまで起こし、

さらに、メルトダウンが起きてもなおそれを認めようとしなかったこれまでの経緯などから、

国策事業については、推進側(事業主体者)の提供する情報は安易に信用できないと感じています。


推進側の報告書を載せましたので、今度は反対側、つまり、地震とCCS実験は関係ある、とする側の

情報も以下に載せます。

石田地震科学研究所 石田昭 氏


上記の映像内では、1962年から1965年まで、アメリカのコロラド州、デンバーで実施された、

放射能汚染水を地下に注入する実験で、注入と地震には相関関係があるという報告がされています。



そしてもう1つはこちら。


上記映像で、原発を止めると地震が多発するという主張や温暖化は詐欺という主張は賛同しかねますが、

それ以外の地震科学者としての地震についての主張は可能性がある内容と感じたので、ご紹介します。

2004年の中越地震と2007年の中越沖地震と、新潟県長岡市で行われていた、二酸化炭素の

地中圧入実験との関連について言及しています。

液化した二酸化炭素を圧力をかけて地中に圧入すれば、地下に存在する地下水は、圧力で移動し、

水を注入したのと同じ状態になる(つまり、アメリカのデンバーでの実験と同じ結果になる)という事、

国が主張する「20km離れているから無関係」は、水の移動を考えると間違いの可能性がある事、

2008年6月の岩手宮城内陸地震でも、震源地から27km離れた電力中央研究所の雄勝実験場で、

水に二酸化炭素を溶かして圧入する実験が行われていた事、

2011年3月の東日本大震災でも、福島県いわき市で二酸化炭素の地下圧入実験が行われていた事

などを挙げて、地震とCCS実験との関連性を指摘しています。

これらの事から、私はCCSと地震の関係性がある事は否定できないと思います。



また、人工地震というと、にわかに信じ難いと思いますが、調べてみると確かに事実の様です。

1984年3月12日 小田原で人工地震実験 (読売新聞記事)



そしてもう1つ。

環境改変兵器禁止条約

「現在あるいは将来開発される技術により自然界の諸現象を故意に変更し(例えば地震や津波を

人工的に起したり台風やハリケーンの方向を変える)、これを軍事的敵対的に利用する事」の禁止を

目的とする環境保全と軍縮に関する条約。  (日本は1982年に国会承認)

この事は、CCSとは直接関係はありませんが、しかし人工的に地震を引き起こす事が可能である以上、

CCSが人工地震の引き金になる可能性は、やはり排除できないと思います。


また、地球深部探査船「ちきゅう」が、2007年から2018年までの間に、

南海トラフ地震発生帯で12箇所も深海に穴を掘っていたというのは、

アメリカのデンバー地震や、北海道胆振東部地震の事例などを考えると大変危険な気がします。

今後30年以内に、南海トラフ地震が発生する可能性は70〜80%と気象庁が発表していますが

それを早めてしまう可能性もあるのではないでしょうか。

地球深部探査船「ちきゅう」 南海トラフ地震発生帯掘削計画


その他、人工地震についてはこちらもご覧ください。

人工地震の基礎知識、歴史、年表


話を火力発電所に戻しますが、二酸化炭素を多く発生させる火力発電は、同時にCCSの様に、

二酸化炭素を地下に埋める事も必要となってしまいますので、推進すべきではありません。


原子力発電については、勉強会や地層処分実験場の視察報告などを

雑記の2010年、2011年に載せていますのでご覧ください。

雑記



さて長くなってしまいましたが、話を元に戻します。

アブラヤシプランテーションを出て再び歩いていきます。
この火災跡地を、少し離れた村の住人が買い取り、パーム油をとるためのアブラヤシを植えています。

一方、冒頭で紹介したFNPFの10人は各1ヘクタールずつ購入しトラスト地(自然保護区)にしました。


そして小屋で休憩。

アブラヤシプランテーション以外は、木陰がなく炎天下の下を歩いてきたので、結構大変でした。

FNPFとしては火災跡地に色々な樹種を植えて果樹園にし農業も兼ねたアグロフォレストの実践と、

エコツアーも受け入れ環境教育の実施を目指しています。

この小屋の周りには泥炭地でもよく育つパイナップルを植えています。

オランウータンはアブラヤシの若葉を食べる為、プランテーション企業にとっては害獣で、毎月数頭

殺されるニュースが流れるような状況となっています。



インドネシア政府のジョコ大統領が、アブラヤシプランテーションや森林破壊についてどの様な見解を

持っているかは、2017年にEUがパーム油の規制を検討している事に反発した以下の事例から窺えます。




環境のお話 13 :EU(欧州連合)の森林保護の為のパーム油規制


2017年4月、EUで下院の役割を担う欧州議会が、パーム油生産者が引き起こす森林破壊を

止める為、EU域内市場に持ち込むパーム油に関する単一認証制度を導入する決議案を賛成640、

反対18、棄権28で採択し、決議案にはパーム油を用いた火力発電所を段階的に廃止する内容も

盛り込まれ、EU行政府の役割を担う欧州委員会に対して政策立案を促す形となりました。


欧州議会は安価な植物油の生産が森林破壊や生態系破壊、二酸化炭素排出につながっているとし、

欧州委員会に対し、パーム油を含む植物油についてバイオ燃料としての利用をできれば2020年までに

段階的に廃止することを要請。また、パーム油の持続可能な生産については、民間認証制度が複数

生まれているが、それにより混乱を招いているとし、EU域内市場では、単一認証制度を創設すべきだ

としました。加えて、EU域内市場に輸入されるパーム油や関連製品に対しては一定のサステナビリティ

基準を課すべきだとし、欧州委員会に対しパーム油のトレーサビリティを改善することや、単一認証制度

が制度化されるまで優遇関税制度などを設け基準を満たさない製品にコストを圧力をかける対策などを

要請しました。


この欧州の動きに対して、マレーシアのナジブ首相とインドネシアのジョコ大統領は2017年11月、

輸入規制に反対し共同で対処することで一致。会見で「規制は不公平で、両国のパーム油

生産者1800万人(マレーシア60万人、インドネシア1750万人)に対する差別であり看過できない」

と語りました。

------------------------------------------------------------------------------

私はEUの動きは、政府として勇気ある判断を下したと思います。政府は、様々な要素を

第三者的な観点を持って物事を判断する必要があります。経済だけでなく、環境や人権という視点です。


熱帯林を一度失うと、取り戻す事はほぼ不可能です。

森林内には様々な生き物が存在し、複雑な生態系ネットワークを作っています。

仮に一度失った場所に木を再生させたとしても、元あった様な複雑な生態系が回復するかわかりません。


陸続きになっていない島では、生き物はその地域で独自に進化するので固有種が多く存在します。

固有種は他の地域にはいない為、その種が人間の開発などによって失われてしまったら

それで絶滅となります。島嶼性(とうしょせい)の生物は絶滅のおそれが常にあります。

絶滅危惧種のオランウータンをはじめ、貴重な動物や植物を守らなければなりません。



また、絶滅危惧種でなくても、今普通に生息している生き物達を絶滅危惧種にさせない事も重要です。

絶滅危惧種になってから大切にするというのは手遅れになる可能性が高くなります。

通常、ひとたび森が農地や宅地、道路などに転換されたら二度と森には戻りません。

つまり、生き物達の生息地は一度失われたら取り戻す事はほぼ不可能。

森を復元できないという事は、生き物の数は回復しないという事です。

だから、絶滅危惧種にさせないように、これ以上森を減らさないような政策をとっていく事が大事であり、

その点で、経済だけでなく環境に配慮するEUの政策は素晴らしい決断と言えます。



EUはヨーロッパ各国が集まった連合の政府ですが、環境分野では様々な先駆的事例を実践しており、

この様な意思決定ができるのは、政治家の世界情勢をきちんと捉える力と、それを支える国民の

意思表示(投票行動)がしっかりしているからと感じています。

投票行動ができるのは、国民が情報をきちんと集めて分析している事や、

マスコミの情報発信の仕方なども関係しているでしょう。

選挙の時だけでなく、日ごろから、政治や社会問題について、考える習慣を持つ事、

それぞれの立場で正しい判断と行動をする事、(忖度で事実を捻じ曲げたり、不正をしない事)などが

今の日本には必要です。



30分ほど休憩した後、再び炎天下を歩いて、元の船の場所に戻ります。



帰り道、森の中でごみがまとめて捨てられていました。残念な光景です。

焼却施設がない地域では、埋め立てるか、この様に放置するしか選択肢がありません。

自然に分解されないプラスチックごみはずっと残ります。

食べ物の臭いがついていれば動物達に間違えて食べられてしまう恐れもあります。

できればプラスチックに依存しない社会を取り戻してほしいと思います。


12時30分、船に乗ったらお昼ご飯。1時間ほど船旅です。

船で食事をしながら移動するのは贅沢な時間でした。自然が残っていればこそできること。

この時は、結構歩いた後だったので、余計においしく感じました。


次にタンジュンプティン国立公園内のキャンプリーキーに向かいます。
国立公園なので、森は保護されています。

先ほどの炎天下と違って、木が生い茂り、木陰の中を歩く事ができたので助かりました。

炎天下と森の中を歩くのでは、気温が全然違うので、疲労度も大きく異なります。

森の中は、一定の温度と湿度が保たれています。それは木陰があることに加えて、

地面には土があり、水分を保っているため、水分蒸発による気化熱作用によっても、

森林内の気温の上昇が抑えられています。木の葉からも蒸散しています。

体感温度の違いから、いかに木や土、森が大事かをあらためて実感しました。




環境のお話 14 :ヒートアイランド現象(都市型気温上昇)


都市部や町では、いたるところがコンクリのビルやアスファルトの道路で覆われてしまった結果、

太陽熱をどんどん蓄熱していき、気温が上昇するヒートアイランド現象が起きています。

夏の昼間はとても暑くなり、夜になっても気温が下がらず、寝苦しい熱帯夜が増えています。

冬も同じ様に蓄熱効果によって気温が下がりにくくなり、降雪や積雪の機会が昔と比べて減っています。


他にも、自動車や工場、火力発電所、ごみの焼却所など、物を燃焼させた後に出る排熱や、

エアコン、パソコンなどの機械類を動かす際に出る排熱、

都市の高密度化による温まった空気の滞留なども、ヒートアイランド現象の要因となっています。

ヒートアイランド現象は、地球温暖化とはまた別の要因なので、都市部では二重の気温上昇となっています。


ちなみに原子力発電所からも核分裂による大量の熱エネルギーが自然界に放出されています。

原子力発電は発電時の約3分の1しか熱エネルギーを活用できておらず、

残りは冷却の為に海水の循環で排熱しており、別名、海温め装置とも呼ばれています。


2018年7月23日、埼玉県熊谷市で41.1度、日本観測史上の最高気温を更新しました。

2007年に40.9度の日本最高気温記録をつけましたが、それを塗り替えました。

熊谷は盆地である事や、フェーン現象、都心部の熱い空気の流入などの熱くなる要因はありますが、

それでも最高気温を更新し続けているのは、温暖化やヒートアイランド現象の影響があるからでしょう。

また近年は、毎年といって良いくらい、各地で最高気温の記録更新のニュースが流れています。


ヒートアイランド現象を解決していくには、町に再び緑を取り戻していく必要があります。

前述した様に、車を減らし、必要なくなった駐車場を緑地に変える事で、

木陰と気化熱利用によって温度上昇を抑える事が可能となります。

町の緑化は、ヒートアイランド対策と同時に、二酸化炭素吸収にもなるので地球温暖化対策にもなります。

今後カーシェアリングの普及で車を手放す人が増えれば、駐車場の緑化は実現しやすくなるはずです。



少なくとも今ある街路樹は切ってはいけません。どうしても切らなければいけないという場合は、

その代わりとなる様に木の植え替え、別の場所での植林を義務付ける必要があります。

こうする事で、全体的な木の減少を抑える事ができます。


また、緑地を維持する事に、財政的な支援、例えば固定資産税の減免などをする事で、

積極的に緑地を維持、あるいは増やす流れを作り出す事も可能となります。

気温上昇を抑えるという事は、公共の福祉の向上につながります。




森の中を歩いていきます。
しばらく木道が続きました。


この建物内にオランウータンに関する展示があります。

あまり時間がなかったのでちょっと建物内を見ただけでした。


さらに奥へと進んでいきます。




20分位歩いて、オランウータンに給餌する場所に到着。

広場の様になっていて、多くの観光客が集まっていました。100人近くいたと思います。

柵の向こう側に小さな橋が架かっていて、その上に餌のバナナが大量に置かれています。

管理している現地の人が、「オーゥ」とオランウータンを呼ぶ声を発していました。

すぐに表れる気配はありませんでした。

その後も、ゆっくり、間隔を置いて、呼び続けること約30分。

2頭のオランウータン親子が現れました。

木の橋の上に2頭のオランウータン。


橋の上に置かれたバナナを食べるオランウータン親子。


森の住人は、ゆっくりとした動作で静かに食べていました。

穏やかな感じでした。

10分くらいバナナを食べて、その後、また森に帰っていきました。


同じ霊長類として、私達人間は、彼らの住む環境を守っていかなければいけません。

私達人間の家が壊されたら困るように、オランウータンにとっての家である森が壊されたら困るはず。

その森の木の伐採は私達人間が紙を使うため、家を建てるため、植物油を使うため、畜産動物を飼育する為、

畑を作るためなど様々な理由で伐採されています。

私達が物を必要とすることは、裏を返せば森の破壊に加担し、彼らのすみかを奪うという事です。


1999年から2015年までの16年間で、オランウータンは15万頭も減ってしまっていました。

原因は、生息地の森の減少だけでなく、人による意図的な殺害もあります。


例えば、農作物を守る為だったり、食用の為、自衛の為など。

また、オランウータンは繁殖が6〜7年に一度と遅い事も減少に拍車をかけています。

参考:ナショナルジオグラフィック


繰り返しになりますが、できるだけ今ある物を大事にして、知恵と工夫で無駄な物は買わない。

一人一人の消費行動、企業の事業活動、政治家や官僚の政策決定。

そういう事の積み重ねによって、遠くの森を守ることが出来るようになります。


彼らオランウータン、その他、様々な生き物達が、この先も行き続けられるように、

見て見ぬ振りではなく、常に考え、これまでの生活様式を一気に変えるのは難しいとしても、

少しずつでも変えていくという意思と行動が大切です。


さて、オランウータンを無事に見る事ができたので、来た道を戻っていきます。

船着場近くまで来ると、小さな猿の群れが現れました。




数は10数頭いたと思います。

2mくらいまで近寄ってきました。あまり警戒心がなく、大きさからも子ザルと思われます。

すぐ近くの木の上をささっと移動したり、桟橋の下の構造材をうまく伝って移動するなど、彼らの

優れた移動能力を間近で見る事ができました。

お別れの挨拶に来てくれたのかもしれません。


村に戻る為、船に乗ります。国立公園前の船着場には、この様に多くの船が泊まっていました。


帰りの船の中、青年団とゲームで交流しました。




両手で押し合いっこ。足が動いたら負け。相手は元FNPFのADUT。


両腕を組んでの腕立て伏せ。手の幅が狭くなり滑りやすく力が入らないため難しい。


腕相撲は元警察官で体格の良いARISが強かったです。体を使った遊びは万国共通です。


そんな事をしているうちに、徐々に日が暮れていきました。






この日もあっという間の1日でした。

船で川を移動し、熱帯の森を巡り、オランウータンやサルたちを見て、船上で食事をして、

再び船で現地の人達と遊びながら家に帰る。

なんとも贅沢な時間でした。


無事、家についてマンディ(水浴び入浴)をしてさっぱりしたところで夕飯。
テンペという大豆を発酵させた物を揚げたテンペフライ、青菜の炒め、ミックス野菜、バナナ。

ベジ仕様でも味付けがしっかりしていて毎度おいしい味です。

料理前に、ロンボク(唐辛子)を食べてみるかと聞かれ、せっかくだからとお願いしました。

手前のお皿中央、赤い物がそれです。

私が食べたのは、このわずか1本の唐辛子。

しかし、その2時間後から下痢になり、翌日夕方まで計7回、トイレに行くことになり、回復までほぼ1日

かかりました。夜中1時、3時にもトイレに行く羽目に。。。

確かに、口に入れた瞬間、強烈な辛さで、口の中が爆発したような感じがしました。

それを飲み込んで、おなかもびっくりしたのだと思います。

元々私は甘党で、辛いのはほとんど食べないので余計です。良い経験となりました。(^-^;)


毎回食べきれない量(確実に2人前はあった)が出てきたので、

最初の日に半分の量で良いという事を伝えておけばよかったと後悔しました。

おもてなしの気持ちだと思いますが、おそらく現地の人たちにとって、食べ物は貴重なはずです。

取り皿形式だったので、おそらく捨ててはいないと思いますが、はやめに言っておけば、

余計な気を使わせずに済んだと思いました。


その5へ続く



戻る


TOP