竹林の会/エコの庵/小さな植林隊





環境情報 平成27年(2015年) 6月16日(火)






中国で象牙製品600kgを粉砕、一方でタンザニアでは象が「壊滅的減少」


中国当局は、5月29日、北京で、世界各国の外交官や報道陣を招待して、
象牙製品600kgを粉砕するイベントを行いました。

AFPBB環境ニュース 2015年5月30日
象牙製品600キロ粉砕、電動のこぎりで切断も 中国




象牙の違法取引の中心地というイメージを払拭させる為だそうですが、
この粉砕するという行為自体もなんだか見ていて心苦しいものがあります。


タンザニアでは象が壊滅的減少となりました。
6月1日、同国政府の発表では、象の生息数は

2009年   10万9051頭 
2014年    4万3330頭


と、わずか5年で激減しました。

2009年以降、少なくともタンザニアからは45,000kgの象牙が
密輸されているそうです。

AFPBB環境ニュース 2015年6月3日
タンザニアの象が「壊滅的減少」、監視団体



1989年、乱獲による減少から象の保護をするために

ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)

でアフリカゾウが

「付属書T」 (絶滅の恐れのある種で、国際取引の影響を受けているか、
受けたことのある種が掲げられており、商業目的の国際取引は禁止)


の対象となりました。

商業取引での輸出入禁止となり、全世界で象牙販売が禁止されました。


しかし、1997年、ワシントン条約会議で南部アフリカのナミビア、
南アフリカが取引制限を緩和する

「付属書U」 (国際取引を規制しないと絶滅の恐れがある種が掲げられており、
商業目的の取引はできるが、輸出国政府の管理当局が発行する輸出許可書が必要)


に戻し、ボツワナ、ジンバブエも「付属書U」に戻しました。


2000年には流通・販売実験として日本が約50,000kgの「合法象牙」を
500万米ドル(約5億2千万円)で買い取ることが許可されました。

この合法象牙の流出が、象牙密猟者、販売カルテル、消費者に
「象牙ビジネス再開」という大きな勘違いを植えつけてしまいました。

2008年には、日本は108,000kgの象牙を買い取りました。

こういった日本の行為が、象の生息数を激減させていることにつながっています。
恥ずかしい。



象牙の国際取引には

「象の保護に役立つ適切な国際取引」 と
「象を絶滅に追いやる違法な国際取引」 の

2つがあると言われていますが、実際には、合法象牙と違法象牙の区別をする事は
簡単ではありません。

本来は象牙市場に合法象牙を過剰に供給することで密猟を減らす試みが、
実際には正反対な効果が出てしまいました。

つまり、合法象牙が象牙市場に加算されたことで象牙の需要が復活して、
象牙価格が上がってしまい、違法象牙取引も復活してしまいました。



本来なら自然死や害獣管理で殺された象の象牙だけが国際取引の対象となるはずだった
日本と南部アフリカ諸国の合法象牙取引は、実際には

「アフリカゾウの乱殺」
「象牙のロンダリング」 (違法象牙を合法象牙として流通させる)

が可能な土台を作り上げてしまいました。


一向に減る傾向を見せないアジアの象牙の需要と、それに連動して上昇する象牙の市場価格。
違法象牙は、今、紛争ダイヤモンドと同じ悲劇を繰り返しています。

2008年に、 1kg 157ドル だった象牙価格は、
2012年には、1kg 2357ドル と15倍以上も上昇。



今や象牙1本の値段は、アフリカ人の平均年収の20倍以上。
麻薬取引と同じで、一攫千金を狙った人間が象の密猟の世界に引き込まれています。

高額で取引される象牙は、中国では 「ホワイトゴールド」と呼ばれ、
その販売ルートは、麻薬シンジケートや暴力団によって管理されています。

そして象の棲みかであるアフリカ諸国では、テロリストグループや反政府組織は
象牙による外貨獲得と、それによる武器購入を広く行い始め、まさに象牙は
紛争地帯の資金源と化してしまいました。


2013年、国連事務総長は、象牙が、武装勢力の資金源になっていることに
懸念を表明しています。



一方、輸入している日本では、どうなっているのか。
試しに、インターネットではんこ屋を検索するとたくさんお店が表示されますが、
各お店には、象牙の印鑑が取り扱われています。

樹木で作られる木質系と、動物由来の角や牙系、人口素材系、金属系などに分かれます。
その中でもやはり象牙は値段が高く、価値のあるいい商品という扱いになっています。

どの部位が高級な素材になるのかという説明や、
ワシントン条約についても書かれていたりしますが、
扱っている象牙の印鑑は、証明書がついた正規の物という表示までで、
象が減少していることや、絶滅の危機にあることを表記していません。
逆に、取引量が少ないため、貴重で価値があると、購買を煽っています。



購入する側の立場で考えると、はんこはそうそう買い換えるものでもなく、
実印や、銀行印、法人印など、大切な時に使うもので、
新たに物事を始めるときに用意する事が多い為、
こういう時は少しくらい高くても、できるだけいいものがほしい
という気持ちになったとしても不自然ではありません。

そうすると、せっかくだから一番いいものを、という思いから、
象牙の印鑑を選択することになります。
その数の積み上げが、象牙に対する膨大な数の需要になります。

しかし、象の絶滅危機という現状を直視し、この習慣を変えなければなりません。


高まるアジアの需要から、急激に増加した象牙の密猟。
象牙の闇取引が横行していたタイでは、
2013年3月に行われたワシントン条約締約国会議で、
象牙の国内取引を終了することを宣言しました。

合法取引と違法取引の見分けがつかない以上、
合法取引が認められたとは言え、日本や中国でも、
いい加減に取引自体を法的に禁止することが、必要不可欠です。

そして消費者も像が絶滅の危機に瀕していることを理解して
象牙の製品を買わないという行動をする事が大事です。
象牙の需要がなくなり売れなくなれば、象が殺される事は減っていくでしょう。



参考

●日本人の皆様も自責の念を感じて下さい。「中国が密輸象牙6.2トンを処分。ゾウに希望を。象牙を求めないで。」象牙大国日本/苦しみ続ける動物達の為に◆さっち〜のブログ◆

●サイの角や象牙の密猟が止まらない 日本・中国の「象牙の合法的取引」も引き金に/The huffington post

●密猟によるアフリカゾウ絶滅の危機―日本の象牙買い取りが引き金に/The big issue

●象牙/ウィキペディア







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