小さな植林隊





環境情報 2008年2月16日(土)





化石燃料による二酸化炭素増加を抑えるためのバイオ燃料が・・・


バイオ燃料生産目的での土地開墾は温室効果ガスの大量排出につながり、
地球温暖化を加速するとの研究が8日の科学誌サイエンスに発表される。

■開墾により大量のCO2が排出

熱帯雨林、草原、湿地などを開墾することで排出されるCO2の量は、
バイオ燃料を使うことで削減されるCO2総量をはるかに上回る。


バイオ燃料の原料となるトウモロコシ、サトウキビ、大豆などを栽培するために
新たに土地を開墾した場合、化石燃料をバイオ燃料に代替することで
削減されるCO2排出量の17-420倍のCO2が大気中に排出される。

つまり、新たに「バイオ燃料由来CO2債務」を抱えることになるのだ。

炭素は地中のほか、寿命を終えた樹木や植物にも蓄えられており、
CO2として大気中に放出されている。
土地の開墾は、大気中へのCO2排出量増加につながる。
この増加分を、開墾した土地で生産した原料を用いたバイオ燃料で相殺するには、
数年、場合によっては数百年かかる。

研究チームがインドネシアでヤシ油生産のため開墾された湿地を調査したところ、
開墾により生じた「バイオ燃料由来CO2債務」を返済するのに
423年を要することがわかった。


■居住環境の破壊にもつながる

研究チームのひとり、民間環境保護団体「ネイチャー・コンサーバンシー」
創始者のJoe Fargione氏は
「地球温暖化を緩和する上で、バイオ燃料生産目的で土地を開墾するのは
まったく意味がない」と語る。

同氏は「現在使用されているバイオ燃料はすべて、直接的または間接的に
居住環境を破壊している。
現在60億人分の食糧を生産している世界中の農業従事者が、
さらに食糧由来のバイオ燃料生産を行うには、さらなる農地が必要になる」として、
住環境の問題にも言及している。

■CO2隔離を促すインセンティブが必要

共同研究者のミネソタ大学のステファン・ポロスキー教授(応用経済学)は、
「問題は(CO2の管理を促す)適切なインセンティブがないことだ。
土地所有者は、ヤシ油などの生産では報酬を得られるが、
CO2を管理しても何も得られない」と説明する。
そうした状況が過度の開墾、ひいてはCO2排出量の大幅増につながる可能性が
あるのだという。

CO2排出量を減らし環境破壊を遅らせるためには、CO2隔離にインセンティブを、
あるいはCO2排出に罰則を設けることが必要だとポロスキー教授は主張する。


また研究チームは、米国におけるトウモロコシ由来のエタノールの需要急増が
ブラジルの熱帯雨林の破壊を加速させていると指摘。
需要に応えるため米国のトウモロコシ農家が大豆との輪作を止めたため、
ブラジルの農家が大豆需要に応えることを余儀なくされ、
アマゾンの森林破壊を助長しているというのだ。


一方で研究チームは、自然の生態系に影響を及ぼさず、
地球温暖化を加速させないバイオ燃料の存在も指摘。
バイオマス廃棄物や廃材木を原料とするバイオマス燃料こそ、
環境負荷を軽減しうる、科学者が開発を目指すべき燃料だとまとめている。



(2008年2月8日(金) AFPBB NEWS より 一部要約)
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2347998/2613788

<感想>


化石燃料(石油、ガス、石炭などの地下資源)から脱却するということで、
バイオ燃料が脚光を浴びていますが、
バイオ燃料の元となるとうもろこしや、さとうきびを生産するためには、
森林を新たに破壊して、畑にしないといけません。

森林を破壊するという事は、単に木を切る事での二酸化炭素吸収元がなくなるだけでなく、
記事にあるとおり、地中や、すでに枯れた木や草などが固定している炭素を
新たに排出することになります。
地中というといまいちわかりにくいですが、泥炭(でいたん)といって、
植物の遺骸が分解されないまま堆積し、泥の状態の中でも炭素は固定化されています。

また、地中といえば、シベリアのタイガの永久凍土の下には
温室効果が二酸化炭素の20倍あるメタンガスが大量に眠っていて
温暖化で永久凍土が溶けてしまえば、それらが大気中に拡散し温暖化を
一気に加速させると言われています。


木や草は成長過程でたくさん二酸化炭素を吸収し、
炭素を固定化して自分の体の一部とします。
それは枯れたあとも燃やさない限りは固定化されたままです。
そして炭素を固定化したまま、枯れた草木は堆積し、
時間をかけて腐葉土や泥炭となります。

次々と枯れた木や草が毎年堆積していく為、
大気中の二酸化炭素の吸収元として大きな役割を果たしています。

森というのは、単に二酸化炭素の吸収源というだけでなく、
木が吸収した炭素を固定化したまま蓄積している、炭素の貯蔵庫でもあります。

こう考えると長い間森としてあったところは、大量の二酸化炭素を貯蔵していて、
バイオ燃料がいいという理由で安易に森を切り開いてしまうと大変なことになります。

二酸化炭素の面以外にも、森はたくさんの動物や昆虫の住処でもあり、
食べ物を提供し、水を蓄え、夏は涼を、秋には実をならせ、
木は加工すれば家、机、たんすなど様々な物に変えることができ、
役割を終えれば土に還り、次の木が育つ為の栄養源となります。

木自体は、再生可能な資源ですが、森は完全に破壊してしてはいけません。
森が完全に破壊されたら、それを元の、栄養が富んだ土、
様々な種類の木や草、そこに生息する動物、昆虫、微生物、
そしてそれらが正常な食物連鎖が機能している状態に復元させる為には、
何百年、何千年と時間がかかると思います。


また、木が再生可能な資源といっても、樹齢何百年、何千年というものは
再生可能とは言い難く、化石燃料と同じです。
アマゾンや東南アジアの熱帯林など、天然林として残っているところは、
再生不可能な資源と捉えるべきものです。

しかし、現在は、畜産動物を飼育する為の場所や、作物を作るための農地などのために
森がどんどん切り開かれ、いずれなくなると言われています。

原因は私達一人一人にあります。
需要があるから生産者は供給し、消費者から生産者に
お金が行くので成り立つのです。
私達消費者が何か物を買うことは、その事業を応援することと同じなのです。

私達がエネルギーの消費を増加させ続けることは、化石燃料の消費を増加させ、
化石燃料が温室効果を促進するからと、バイオ燃料に移行するようになり、
バイオ燃料を供給する為には、とうもろこしやさとうきびの畑を作らなければならなくなり、
その為には森林を切り開かなければならず、
結果的には森林破壊をお手伝いしていることになります。

だからこそ、無駄にエネルギーを消費してはいけないのです。






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